PythonやRustで数学的な問題を解いてみたい方へ――
前回の記事「友愛数入門! 数の面白シリーズ!」では、友愛数について紹介しました。
今回はその友愛数を、定義に基づいてPythonとRustで実際にプログラムを組んで探索していきます。
Pythonでの基礎的な実装から始め、Rustを使った高速化にも挑戦。
初心者でも理解しやすいコードで、数論の面白さと言語間の違いを体験できます。
「プログラミングで数学を楽しむ」シリーズ第2弾、どうぞお楽しみください!
友愛数とは(復習)
2つの自然数aとbが友愛数であるとは、次の条件を満たす時である。
\sigma(a) – a = b かつ \sigma(b) – b = a
ここで、\sigma(n)はnの正の約数の総和である。
以下は友愛数の組の例になります。
- (220,284)
- (1184, 1210)
- (2620, 2924)
- (5020, 5564)
- (6232, 6368)
Pythonで友愛数を探す:実装&解説
pythonで1から10000までの友愛数を列挙します。
ソースコードは以下になります。
import time def sum_of_proper_divisors(n): """nの真の約数の和を返す(1からn-1の約数の和)""" total = 0 for i in range(1, n): # 1からn-1までの整数について調べる if n % i == 0: # iがnの約数であれば total += i # 合計に加える return total def find_amicable_pairs(limit): """指定された範囲で友愛数のペアを探す""" pairs = [] # 友愛数の組を格納するリストを初期化 for a in range(2, limit): # 2から指定された最大値まで調べる b = sum_of_proper_divisors(a) # 真の約数の和を計算する # b>aを条件にすることで、(b,a)のような重複ペアを除く if b > a and sum_of_proper_divisors(b) == a: # b > aでbの真の約数の和がaなら友愛数 pairs.append((a, b)) # 友愛数の組のリストに追加 return pairs if __name__ == '__main__': start = time.time() # 10000未満の友愛数ペアを探索する amicable_pairs = find_amicable_pairs(10000) print("10000未満の友愛数のペア:") for a, b in amicable_pairs: print(f"{a} と {b}") end = time.time() print(f"処理時間: {end - start:.5f}秒")
結果は以下になります。
10000未満の友愛数のペア: 220 と 284 1184 と 1210 2620 と 2924 5020 と 5564 6232 と 6368 処理時間: 2.26706秒
ソースコードについて、解説します。
- sum_of_proper_divisors関数は引数nの真の約数 (自分自身を除いた約数)の和を計算して返却しています。
- find_amicable_pairs関数は引数limitの数までの友愛数の組をリストに追加して、そのリストを返しています。
ポイントになるのは次の手順の部分になります。
- 2からlimit-1までの数aの真の約数の和を計算してbという変数に格納
- 逆にbの真の約数の和を計算し、aと等しいかをチェック
- aと等しければ、組(a,b)は友愛数の組になる
- ただし、組 (b,a)も友愛数の組になり、重複してしまうので片方を除外したい。
そのため、b > aの場合のみ友愛数の組のリストに加える
Rustで友愛数探索を高速化してみよう!
Rustでも同様に友愛数の組を探すプログラムを組んでみます。
use std::time::Instant; // 時間計測のためのモジュールをインポート /// n の真の約数の合計を返す関数(1 から n-1 までの範囲) fn sum_of_proper_divisors(n: u64) -> u64 { let mut total: u64 = 0; for i in 1..n { if n % i == 0 { total += i; } } total } /// 与えられた上限までの友愛数のペアを探す関数 fn find_amicable_pairs(limit: u64) -> Vec<(u64, u64)> { let mut pairs = Vec::new(); for a in 2..limit { let b = sum_of_proper_divisors(a); if b > a && sum_of_proper_divisors(b) == a { pairs.push((a, b)); } } pairs } fn main() { // 開始時間の記録 let start = Instant::now(); let limit: u64 = 10000; let amicable_pairs = find_amicable_pairs(limit); println!("{} 未満の友愛数のペア:", limit); for (a, b) in amicable_pairs { println!("{} と {}", a, b); } // 経過時間を計算 let duration = start.elapsed(); println!("かかった時間: {:.6}秒", duration.as_secs_f64()); }
結果は以下になります。
10000 未満の友愛数のペア: 220 と 284 1184 と 1210 2620 と 2924 5020 と 5564 6232 と 6368 かかった時間: 0.346076秒
プログラムの内容はPythonと同じです。
完全数の時の探索と同様に、Rustの方が処理速度は速いですね!
パフォーマンス比較 (Python vs Rust)
ここでは、find_amicable_parisに渡す引数limitの値を10000,20000,50000,100000と変えて、Python版とRust版で処理時間を比較してみます。
limit | Python (秒) | Rust (秒) |
---|---|---|
10000 | 2.3 | 0.34 |
20000 | 9.1 | 1.4 |
50000 | 57.4 | 8.6 |
100000 | 228.6 | 34.2 |
※測定環境は、AMD Ryzen 7 3700X 8-Core Processor, Windows 10 Home Version 2009になります。
Rustの実行時間は、Pythonに比べて圧倒的に短く、特に入力が大きくなるほどその差は顕著になります。
Pythonは直感的で書きやすい反面、速度が求められる場面ではRustのような低レベル言語が強みを発揮します。
まとめと次回予告:サービト・イブン=クッラの方法へ
今回は友愛数の定義に従ってシンプルに友愛数の組を探索しました。
次回の記事では、「サービト・イブン=クッラの方法」を使用して友愛数の組を探してみたいと思います。
次回もお楽しみに!