今回は「友愛数」という数について紹介します。
友愛数とは
自然数 aとbが友愛数であるとは、aのa以外の正の約数の和がbに等しく、bのb以外の正の約数の和がaに等しいことである。
(220,284)は友愛数の例です。
チェックしてみましょう。
220の自分自身を除いた正の約数は以下になります。
1,2,4,5,10,11,20,22,44,55,110
これを合計すると284になります。
一方、284の自分自身を除いた正の約数は以下になります。
1,2,4,71,142
これを合計すると220になります。
よって、(220,284)は友愛数であることが分かります。
他にも以下の組も友愛数になります。
- (1184, 1210)
- (2620, 2924)
- (5020, 5564)
紀元前5世紀には友愛数はすでに知られていました。
最初に見つけられたのは最小の友愛数である(220,284)です。
友愛数を見つける方法
850年ごろにサービト・イブン=クッラによって次が示されています。
整数n \geq 2に対して、次のようにp,q,rを定める:
p = 3 \times 2^{n-1} – 1
q = 3 \times 2^n -1
r = 9 \times 2^{2n-1} – 1
この時、p,q,rが素数であるならば、(2^npq,2^nr)は友愛数の組となる。
この命題はすべての友愛数の組に対して成り立ちません。
つまり、この命題で作ることができる友愛数の組は限られています。
上の命題を使って、友愛数の組を作ってみましょう。
n=2の時、
p = 3 \times 2^1 -1 = 5
q = 3 \times 2^2 – 1 = 11
r = 9 \times 2^3 – 1 = 71
となります。
このとき、p,q,rは全て素数ですので命題1が使えて、
2^npq = 2^2 \times 5 \times 11 = 220と
2^nr = 2^2 \times 71 = 284は友愛数の組になります。
これは上で見た最小の友愛数の組です。
n \geq 2より、p,q,r \geq 3であるので、仮定より2,p,q,rはすべて異なる素数である。
約数の総和を求める式を使うと、2^npqの約数の総和は以下になります。
(1+2+\cdots+2^n)(1+p)(1+q)
(1+2+\cdots+2^n)は初項1、公比2、項数n+1の等比数列の和なので、2^{n+1}-1となります。
1+p = 1 + 3 \times 2^{n-1} – 1 = 3 \times 2^{n-1}
1+q = 1 +3 \times 2^n -1 = 3 \times 2^n
よって、
(1+2+\cdots+2^n)(1+p)(1+q) \\= (2^{n+1}-1 ) \times 3 \times 2^{n-1} \times 3 \times 2^n \\ = (2^{n+1}-1 ) \times 9 \times 2^{2n-1} \\ = 9 \times2^{3n}-9\times 2^{2n-1} ・・・①
友愛数は自分自身を除く約数の和がもう一方の数と等しいことだったので、①から自分自身を引く必要があります。
そのため、2^npqを計算します。
2^npq \\ = 2^n \times (3 \times 2^{n-1} – 1) \times (3 \times 2^n -1) \\= 2^n (9 \times 2^{2n-1} – 3 \times 2^{n-1} – 3 \times 2^n + 1) \\=2^n (9 \times 2^{2n-1} – 9 \times 2^{n-1} + 1) \\=9 \times 2^{3n-1} – 9 \times 2^{2n-1} + 2^n ・・・②
①から②を引くと、9 \times 2^{3n-1} – 2^n \\=2^n(9 \times 2^{2n-1} – 1) = 2^n rとなり、もう片方の数に等しくなります。
もう一方の2^n rの方も同様に計算をしていきます。
2^n rの約数の総和は公式により、以下のようになります。
(1+2+\cdots+2^n)(1+r)
1+r = 9 \times 2^{2n-1}なので、
(1+2+\cdots+2^n)(1+r) \\= (2^{n+1}-1) \times 9 \times 2^{2n-1} \\= 9 \times 2^{3n} – 9 \times 2^{2n-1}
ここから、自分自身である2^n r = 9 \times 2^{3n-1} – 2^nを引きます。
(9 \times 2^{3n} – 9 \times 2^{2n-1}) – (9 \times 2^{3n-1} – 2^n) \\= 2^n(9 \times 2^{2n-1} – 9 \times 2^{n-1} + 1) ・・・③
ここで、2^npqの計算 (②の1つ上の式)を見ると③が2^npqに等しいことが分かります。
よって、2^n rの約数の総和から2^n rを引いた数は2^npqに等しくなります。
以上より、(2^npq,2^nr)は友愛数の組になります。
数学の色んなところに登場するオイラーさんは、サービト・イブン=クッラの命題を一般化した次の命題を発見しています。
整数1 \geq m \geq nに対して、次のようにp,q,rを定める:
p = 2^m(2^{n-m} + 1) – 1
q = 2^n(2^{n-m} + 1) – 1
r = 2^{m+n}(2^{n-m} + 1)^2 – 1
この時、p,q,rが素数であるならば、(2^npq,2^nr)は友愛数の組となる。
サービト・イブン=クッラの命題はオイラーの命題のm = n-1の場合と言えます。
証明はサービト・イブン=クッラの命題と同じような手順で示すことができます。
オイラーさんは60個程度の友愛数の組を発見しています。
現在まで知られている友愛数の組は、すべて偶数同士の組または奇数同士の組です。
最後に
友愛数については現時点でも以下のことが未解決です。
- 友愛数の組は無限に存在するか?
- 偶数と奇数からなら友愛数の組は存在するか?
今回は友愛数の定義を紹介して、友愛数を見つける方法を紹介しました。
次回はプログラムを使って、友愛数の組を探したいと思います。